【概 要】『コウヤヒジリ』は泉鏡花の代表作で、山奧に住んでいるある魔女が通りかかるスケベイの男を動(dòng)物に変えてしまう怪異談である。そういう現(xiàn)実の世界と魔女のいる「異境」の間には、必ず両者を隔てながら繋げる「境目」がある。本論文は「ドア」を中心として、小説に隠れる三つの「ドア」を一々探してから、それぞれのファンクションや作者との関わりを検討する。

【キーワード】泉鏡花、「ドア」、分かれ道、ヘビとヒルの森、水

◎キョウカの生涯

泉鏡花（1873-1939）は、明治後期から昭和初期にかけて活躍した小説家である。戯曲や俳句も手がけた彼は尾崎紅葉に師事した。『夜行巡査』や『外科室』で評(píng)価を得、『高野聖』で人気作家になった。江戸文蕓の影響を深くうけた怪奇趣味と特有のロマン主義で知られている。また、近代における幻想文學(xué)の先駆者としても評(píng)価される。彼の作品には、『照葉狂言』、『婦系図』、『歌行燈』などがある。

1893年（明治26年）5月、京都日出新聞に真土事件を素材とした処女作『冠彌左衛(wèi)門』を連載。紅葉の斡旋による。紅葉は新聞社の不評(píng)を理由にした打切り要請(qǐng)を説得し、慣れない鏡花にアドバイスを與えながら、ついにこれを完結(jié)させた。同年さらに『活人形』（探偵文庫）、『金時(shí)計(jì)』（少年文學(xué)）を発表。8月には腳気療養(yǎng)のため一時(shí)帰郷し、その序に京都、北陸に遊んで後に帰京。このときの紀(jì)行をもとに『他人の妻』を執(zhí)筆する。1894年（明治27年）1月、父が逝去し、再び金沢に帰る。生活の術(shù)を失い、文筆をもって米塩の途とせんことを切に願(yuàn)う。『予備兵』『義血俠血』などを執(zhí)筆し、紅葉の添削を経て読売新聞掲載。実用書の編纂などで家計(jì)を支えながら、1895年（明治28年）には初期の傑作「夜行巡査」（文蕓倶楽部）と「外科室」（同前）を発表?！敢剐醒矕恕工?、『青年文學(xué)』において田岡嶺雲(yún)の賛辭を得、このおかげで「外科室」は『文蕓倶楽部』の巻頭に掲載されることになった。ここに鏡花の文壇における地歩は定まった。この年6月、金沢に帰り、祖母を見舞う。腳気が完治せず體調(diào)は悪かったが、1896年（明治29年）にはさらに「海城発電」（太陽 （博文館））、「琵琶伝」（國民之友）、「化銀杏」（青年小説）を発表し、賛否両論を受けた。

鏡花にとっての尾崎紅葉は、敬愛する小説家、文學(xué)上の師であると同時(shí)に、無名時(shí)代の自分を書生として養(yǎng)ってくれた恩人であり、鏡花は終生このことを徳として舊師を慕いつづけた。ほとんど崇拝といってもいいその態(tài)度は文壇でも有名なものであった。病床にあってなお紅葉は愛弟子鏡花の行末を案じ、原稿を求めてはこれに添削を加え続けたという。沒後は自宅の仏壇にその遺影を飾って毎日の禮拝を怠らなかった。葬儀で門弟代表として弔辭を読んだのも鏡花である。処女作『冠彌左衛(wèi)門』が1894年（明治27年）に加賀北陸新報(bào)に転売、再連載されたことも、おそらく紅葉の口利きによるものと思われる。

鏡花がほとんど舊師紅葉を神格化していたのに対し、同郷？同窓？同門の徳田秋聲は師とのあいだに距離を置き、自然主義一派に加わったため、二人の仲はよくなかった。改造社で「円本」を出す際、弟子の了解をとるべく社長の山本実彥が秋聲を訪ねると、「では鏡花のところへも行こう」というので行き、話していると、秋聲が、「紅葉はお菓子が好きでたくさん食べたから胃を悪くして死んだのだ」と言ったところ、鏡花は火鉢を飛び越えて行って秋聲を毆り、山本が間に入って秋聲を外へ引きずり出したが、車の中で秋聲は泣き通していたという。しかし後年、鏡花の弟（泉斜?。─锫暏嗡肖违ⅴ雪`トで沒して以來、二人は和解し、交流を持つようになった。鏡花が死んだ時(shí)、里見弴があちこち知らせに歩いていると秋聲が來て、今死んだと伝えると「駄目じゃあないか、そんな時(shí)分に知らせてくれたって！」と怒ったという（里見弴「二人の作家」）、ちなみに『秋聲全集』は近年になり八木書店で刊行された。尾崎家の書生時(shí)代、石橋忍月のところへ使いに行った際に柿をもらい、紅葉への使いものと知らずに食べてしまって、後からいたく恐縮したことがあった。また「大福餅を買ってこい」といわれて、菓子屋に大福を売っているとは思ってもみなかった鏡花は、わざわざ遠(yuǎn)くの露天へ行って屋臺(tái)のやすい大福を買ってき、紅葉に笑われたことがある。

◎小説にある「ドア」

ここで、その人気を呼ぶ『高野聖』のことを研究したい。そのあらすじは以下のとおりである?！杆健工隙刭Rへ行きの汽車の中で僧侶の宗朝と出會(huì)った。宗朝は敦賀で知り合いの宿に一泊するらしく、「私」も敦賀で一泊しなければならなかったので同行することにした。その宿での夜、夜更けまで眠れない「私」は宗朝に行腳中のおもしろい話をしてもらうことにした。宗朝は承知して彼の若き日の出來事を語った：宗朝は飛騨の山麓の茶屋で薬売りの旅商人と出會(huì)った。嫌味な男だったので、茶屋を出た後も道が同じになったときには無視をした。だが、その商人が今でも使われていない危険な舊道の道を行ったので連れ戻しに同じ道に入っていった。ヘビにおびえ、坂にも苦労をするがその道を進(jìn)んでいく。その先ではヒルの大群に襲われて狂ったように歩き続けた。すると、林を抜けた所に一軒の家を見つけ、そこに宿を借りることにする。その家に住んでいるのは美女と白癡、親仁であった。その美女が共に入浴したスケベイを動(dòng)物に変えてしまう妖女だということを親仁から聞いてから、宗朝は妖艶な美女への愛慕と欲望をあきらめて旅を続けることにした。以上、鏡花はそういう魔女が存在する「異境」と現(xiàn)実を二つの世界を作り出している。そういう「異境」と現(xiàn)実の間には、必ず両者を隔てながら繋げる「境目」がある。人はある境目を踏み越えることによって現(xiàn)実とは異なる世界に行くと考えられる。ここで、とりあえず「ドア」と呼ぶことにする。言い換えれば、向こうの「異境」へ進(jìn)むには、この「ドア」を行きぬけねばならない。小説には三つの「ドア」があると筆者は考えている。宗朝と売薬は二人ともそういう三つの「ドア」を通してこそ、魔女の間近にたどり著いたのである。

◎分かれ道

一番の「ドア」は分かれ道だと思われる?！嘎筏悉长长嵌lになって、一條はこれからすぐに坂になって上りも急なり、草も両方から生茂ったのが、路傍のその角の処にある……私が見當(dāng)をつけて、心組んだのはこっちではないので、やっぱり今まで歩いて來たその幅の広いなだらかな方が正しく本道……売薬もこれで迷ったのであろうと思う內(nèi)、切放れよく向を変えて右の坂をすたすたと上りはじめた。見る間に檜を後に潛り抜けると、私が體の上あたりへ出て下を向き、『おいおい、松本へ出る路はこっちだよ』といって無造作にまた五六歩?！箟铀aはなぜ「新道」を捨てて「舊道」を選んだのか。鏡花はなぜそういうシーンを作ったのだろうか。実は明治時(shí)代は初期から歐米を手本としていたが、二三十年を経てからそういう「歐米様式の近代化」に応じないことは、ますます日本各界とりわけ文學(xué)界に関心を寄せられてきたので、「反近代」という思潮は巻き起こった。日本近代文學(xué)が初めに形成した明治20年代では、文學(xué)作品は主に近代的な「出世」の夢を抱く、田舎から都市へ移る「青年」を描くのに対し、明治30年代では日本文學(xué)はすでに都市を離れて地方の景色に関心を持つような傾向が強(qiáng)まってきた。作品が怪奇趣味と特有のロマン主義で広く知られる泉鏡花は、まさにこの転向の代表作家である。」なので、分かれ道に直面する売薬が「新道」を捨てて使われていない「舊道」を選んだのは、確かに鏡花は「西洋化」を排斥して「反近代」を主張することである。また、あとで売薬は馬になってしまったが、「馬」は日本の前近代の「舊道」における欠かせない交通機(jī)関である。二つのことを結(jié)んだら、「馬」になる売薬が日本の前近代の「舊道」を通し、宗朝を魔女の住んでいる「異境」へ連れていくことが想像できるだろう。

◎ヘビとヒルの森

二番目の「ドア」はヘビとヒルの森であろう?！缚证筏い韦?、蛇で。両方の叢に尾と頭とを突込んで、のたりと橋を渡しているではあるまいか……ようよう起上って道の五六町も行くと、またおなじように、胴中を乾かして尾も首も見えぬのが……下の方から縮みながら、ぶくぶくと太って行くのは生血をしたたかに吸込むせいで、濁った黒い滑らかな肌に茶褐色の縞をもった、疣胡瓜のような血を取る動(dòng)物、こいつは蛭じゃよ……この時(shí)は目に見えて、上からぼたりぼたりと真黒な痩せた筋の入った雨が體へ降かかって來たではないか?！攻廿婴去谣毪趣い盲郡椤⒖证恧筏菸钉瑦櫎び∠螭蚺cえる。ヘビは誘惑と情欲のラベルを貼られるが、あとで登場する魔女の美しさ·スケベイとよく合致する。また足を持たない長い體をもつこと、脫皮をすることから「死と再生」を連想させるヘビは、魔女が存在する恒久性も象徴している。文字通りにヒルが雨のように降り、通りかかった人や動(dòng)物を食らいつくしてしまう。この「ヒルの降る森」というものに何とも言えない戦慄のようなものを覚えた。鏡花がわざわざこの部分に十分なページを割いて描寫することを考えれば、狙って書いたものと言ってもよかろう。それはヒルにおける吸血の習(xí)性が恐ろしい雰囲気を出すことや前へ進(jìn)む難しさを著しく強(qiáng)調(diào)するにちがいない。総括すると、ヘビとヒルは魔女の化身·使者だと考えてもいいが、もっと前へ進(jìn)みたければ勇気と強(qiáng)靭をもってこの森を通り抜けねばならない。ちなみに、ヘビとヒルは見た人に強(qiáng)い衝撃を與えずにはおかない生物である。それを「異境」への入口として使うという演出は確かに高い効果を上げていると思われる。

◎水

三番目の「ドア」は水にほかならない?！笌rの上へ谷川の水がかかってここによどみを作っている……」小説によると、宗朝は魔女に連れられてある淵で入浴したが、ほとんどは彼自體がしたのではなく、その魔女がやさしくしてあげたのである。魔女はすべての服を脫いで裸で、宗朝の體をやさしく拭いているが、宗朝は緊張しながら恐れているようだ。魔女の體と美貌と、その息をすることまでも、鏡花はずいぶん描いている、この山奧に住んでいる女はまるで人間世界にない天女のように読者の前に現(xiàn)われた。このような美女と共に入浴した上に、彼女に花びらに包まれるようにしっかりと抱かれる宗朝は、とうとう誘惑に打ち勝って何もせずに済んだ。宗朝は美女にいとまを告げてから、彼女と一緒に生活したがって帰ろうと思っているうちに、親仁は彼にほんとうのことを全部言った。「地體並のものならば、嬢様の手が觸ってあの水を振舞われて、今まで人間でいようはずがない。牛か馬か、猿か、蟇か、蝙蝠か、何にせい飛んだか跳ねたかせねばならぬ。谷川から上って來さしった時(shí)、手足も顔も人じゃから、おらあ魂消たくらい、お前様それでも感心に志が堅(jiān)固じゃから助かったようなものよ。何と、おらが曳いて行った馬を見さしったろう。それで、孤家へ來さっしゃる山路で富山の反魂丹売に逢わしったというではないか、それみさっせい、あの助平野郎、とうに馬になって……」ここから見ると、魔女はその魔力ある水によって、好色家などを動(dòng)物に変えて慰み者として飼っているのに対して、心が善良でも清らかでもある宗朝はこの水を通し、洗禮を受けて浄化されて名に恥じない「高野聖」になった。したがって、最後に「あたかも雲(yún)に駕して行くように見える」と言っても過言ではない。

母が産褥熱のため逝去したせいで、鏡花は幼心に強(qiáng)い衝撃を受けた。それゆえ、母は鏡花にとって終生追慕の対象であった。「私は花びらの中へ包まれたような工合」は、まさに母の胸に抱かれて眠りたがる気持ちをよく示している。このほか、母は未知の世界に行ったのでなかなか會(huì)えないが、鏡花は心の中では母のことを途絶えなく祝福しているはずだ。母が楽しく安らかに生活できる上に、魔女のように外界の侵入に抵抗し、彼女に不法なことをたくらむ人をコントロールすると鏡花は祈っているだろう?！工长嗡乡R花がわざわざ作る、「善」を助けて「悪」を懲罰して「母」を守る「ドア」であると言ってもいい。

【參考文獻(xiàn)】

[1]泉鏡花.コウヤヒジリ[Z].青空文庫，1995.

[2]孫樹林.日本近現(xiàn)代文學(xué)[M].大連：大連理工大學(xué)出版社，2000.

[3]王松華.《高野山圣人》中的孤家魔女考[D].吉林大學(xué)，2008.

[4]由陽.《高野圣》中的溯行之旅[D].吉林大學(xué)，2012.